2013年5月6日月曜日

第13回総選挙、与党連合が政権継続

 

過半数議席獲得で勝利宣言に臨むナジブ首相(テレビ画面)
 第13回総選挙(連邦下院とサラワク州を除く12州の議会)が、55日に行われ、即日開票の結果、政権与党・国民連合(バリサン・ナショナル、BN)が、221議席中過半数を超える133席を獲得し、政権を維持しました。

州議会選挙では、野党連合・人民同盟(パカタン・ラキャット、PR)が政権を握っていたケダ州を奪還し、マレーシア13州のうち10州がBNによる政権となりました。ただ、BNとしては、ケランタン州、ペナン州、セランゴール州の奪還は成らず、午前1250分に行った勝利宣言を行った記者会見でもナジブ・ラザック首相に笑顔はありませんでした。

5年前アブドゥーラ前首相時に戦った前回総選挙と比較して、連邦下院で5議席減となり、またBNが強いジョホールやネグリ・スンビランといった州議会でもPRの議席が増え、BNにとっては厳しい結果となったようです。

ただ、独立以来56年間政権を担当してきたBNが継続して政権を運営することが決まったことは、安定・堅実を持ち味としてきたマレーシアにとっていいニュースではあります。

56年間政権維持と聞くと“独裁”と言う言葉を想起するかもしれません。確かに1981から22年間続いた第4代マハティール首相時代のイメージは、インドネシア・スハルト大統領、シンガポール・リー・クワンユー首相といった近隣国の指導者と時を同じくし、“開発独裁による強権”と言えるものでした。

そういった強い政権が必要だったのは、マレーシアという多民族社会ならではの事情があったことは、本稿の趣旨から外れてしまうので、深入りはしません。注視すべきは、今回の選挙は、ポスト・マハティール時代の10年目の節目であったことです。

前回の総選挙は、マハティール時代の反動である民主化が争点でありました。ペナン州州議会議員による人種差別発言に端を発した事件で、野党議員や新聞記者が容疑者の無期限拘束を可能とする国内治安法により、拘束されるなど、国内が大きく揺れた事情がありました。

4年前アブドゥーラ首相から政権を禅譲されたナジブ首相は、国内治安法の見直しや新聞や雑誌などの発行許可の年次更新制度の廃止など、民主化も進めてきました。今回の選挙戦でも以前と比較すれば、かなり政治信条についての発言の自由度も広がってきました。

また、ものを言うことに関しては、重苦しいマハティール時代を知らないで育ってきた20代が有権者になってきまたことも今回の特徴です。インターネット時代の若い有権者は、政権批判を自由に行うニュース・サイトも目にしています。

今回の野党の伸張は、BNの凋落という文脈よりもより政治が開かれてきた端緒であると捕らえるべきではないでしょうか。

また、海外では民主化の象徴とされているアンワール・イブラヒム氏が率いるPRも、中華系主導の民主行動党(DAP)とイスラム原理主義寄りのマレーシア・イスラム党(PAS)の相乗り連合で、今回も政党間の主義主張の調整がなされているかが見えないまま選挙戦を戦っていました。BNには、不満があるものの、RPに連邦政府は任せられないという有権者の判断は、至極まっとうだったと思います。

今回もBNが目標としていた連邦議会3分の2議席には届かず、苦い薬となる結果でしたが、現状に甘んじていてはいけないと言う有権者の声が政治家に届き、マレーシアをさらに前進させるという意味で希望を実感させます。
(KL支店)
 

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